外貨投資の選択肢はどれくらいある?

外貨投資は近年、円安ドル高やアメリカの金利上昇を受けて人気を博しています。

さまざまな金融機関からもアメリカドル建ての商品が発売されていますが、見た目の高金利に飛びついてしまい、為替リスクを軽視するケースも散見されます。

アメリカドルをはじめ、外貨建ての金融商品には必ず為替リスクがあることを理解して、投資・購入の是非を検討すべきです。

今回は、アメリカドル建ての金融商品について、為替リスクがあることを前提にリスク・リターン、その特徴について解説します。

1. 外貨預金

リスク: 低~中

銀行で取り扱っており、アメリカドル建ての金融商品の中ではリスクは低い部類に入ります。

預金額は外貨建てで銀行が保証していますが、銀行が破綻しない場合に限られます。円の預金とは異なり、ペイオフ(預金保険制度)の対象外となっています。

つまり、為替リスクの他に、銀行の信用リスクも含んでいることを理解しておく必要があります。

リターン: 低~中

銀行が決めた利息が預金者に支払われますが、普通預金・定期預金含めて、同期間の外貨建て債券等よりも低くなることが一般的です。

特徴

為替手数料が高い

普通預金は常に円に戻すことは可能ですが、為替手数料が発生します。

店頭では通常1ドルあたり、1円の手数料がかかりますが、最近はネットバンキングサービスを利用すれば、0.5円以下の為替手数料を提示している銀行が増えています。

さらに、ネット専業銀行であれば、0.1円程度(アメリカドル)で為替取引ができるところもあります。

解約手数料がかかる

定期預金の場合には、満期前に解約すると手数料がかかったり、それまでの金利が定期預金金利ではなく、普通預金金利が適用されたりすることもあります。

当初見込んでいた高金利を受け取れない可能性もあるので、計画的に定期預金を利用する必要があります。

2. 外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)

リスク:中

短期の公社債で運用されるため、外貨預金とは異なり元本の保証はありません。

過去にごく稀に元本割れの報告もあります。

解約した際には、円でも外貨でも受け取ることは可能ですが、即日の受け取りはできず、翌営業日の資金化になります。

リターン:中

外貨預金は銀行が利益を見込める水準で利息の水準が決定されますが、外貨建てMMFは市中金利がダイレクトに反映されるのが特徴です。

したがって、外貨預金よりも金利は高くなることが多いですが、あくまでも運用実績での利回りとなるため、確定利率ではありません。

特徴

外貨建てMMFを円から投資する場合には、1ドルあたり0.25円が手数料としてかかることが一般的です。

これは銀行の為替取引の手数料よりは割安になっていることが多く、さらにネット専業証券のグループ銀行から無料で送金できるサービスを提供しているケースも多いです。

3. 米国株式

リスク: 高

為替リスクはもちろんですが、株式特有の価格変動リスクも含まれます。

近年は低金利下の株高により見過ごされがちなリスクとなっているケースもありますが、国内株式よりもリスクが高いことは理解しておく必要があります。

日本の証券取引所で適用されている「制限値幅」がなく、悪いニュースが出た場合に、その日のうちに20%以上下落することもあります。

リターン: 高

高いリスクを取る反面、成長企業などにおいては高いリターンを期待できます。

最近では、半導体大手のエヌビディアが、1年間で約4倍にも株価が上昇したことが有名です。

特徴:

アメリカの個別銘柄への企業の投資は、ハイリスク・ハイリターンの代表格と言えます。

国内の証券会社から買い付けすることができ、ネット専業証券では手数料をゼロにしているところもあります。

国内株と異なり1株から投資できることから、若年層の投資家にも人気のアセットクラスとなっています。

ただし、米国株式から得られる配当金に対しては、米国内で10%課税され、課税後の金額に対して国内で20.135%課税されます。

つまり、「二重課税」になるのですが、外国税額控除により確定申告することで還付を受けることが可能です。

ただし、米国でかかった10%分がそのまま還付されるわけではなく、その年に自分が納税した所得税から還付される仕組みのため、所得税自体が少ないと全額が戻ってこないケースがあります。

4. 米国株ETF(上場投資信託)

リスク: 中~高

ETFは投資信託の一種ですが、個別の銘柄に投資するよりは分散投資されているため、リスクが軽減されています。

ただし、種類も豊富で業種別のETFの中には、景気に敏感に反応する業種のETFもあり、事前によく調べたり、専門家に相談して投資判断する必要があります。

リターン: 中~高

多くのETFが、インデックスなどに連動していることから、市場全体の成長に連動するため、長期的には高いリターンを期待することができます。

特徴

米国の株式指標(S&P500、NYダウ、ナスダック指数)などに連動するものから、特定業種に連動するものまで、種類にが非常に豊富です。

米国以外の国の株式市場の指数に連動するものもあり、コストも非常に抑えられています。

公募の投資信託と比較すると、運用期間中にかかるコスト(信託報酬等)は1/10以下のものもあり、近年では、投資初心者の受け皿としても注目を集めています。

米国ETFも分配金が受け取れることがあり、米国株式の配当金と同様に、米国内で10%課税されます。

こちらも、外国税額控除の制度により確定申告で還付を受けることが可能ですが、米国株式の配当金のケースと同様に、その年の所得税額によっては全額が還付されないケースもあります。

5. 米国債券

リスク: 低~中

米国債は世界で最も安全な資産の部類に入るため、安全性は非常に高いと言えます。

ただし、企業が発行する債券(社債)は、財務内容に応じた格付けと、償還(満期)までの年数によって利率が決まるため、格付けが低い債券は安全とは言えないものもあります。

一般的に、格付けは格付け会社ごとに呼び方が異なりますが、AAA(トリプルA)から、AA(ダブルA)、A(シングルA)、BBB(トリプルB)までが投資適格の社債と言われ、それ以下(BB以下)の債券は、安全性が低いためジャンク債などと呼ばれることもあります。

このジャンク債は金利が高い一方、企業の倒産リスクも高まるため、債券投資自体が一概に安全と言えません。

債券は償還までの間に換金することも可能です。ただし、換金時の価格は買付時よりも下がっていることもあり、これは買付時と換金時の金利水準により変化します。

買付時よりも換金時の金利水準が高くなっていれば、債券価格は下落していることが多いと考えておくべきです。

つまり、この場合は外貨ベースで投資元本を回収できない可能性があるということです。

リターン: 低~中

債券の種類や購入時の金利によりますが、安定した利息収入を期待できます。

一般的には格付けが低くなるほど、利回りも上昇するためリターンも大きくなります。

安全性と収益性を考えて、自分のリスク許容度にあった選択が可能です。

また、株式と同様にキャピタルゲイン(値上り益)を狙うことも可能です。

買付時の金利水準よりも、換金時の金利水準が低くなっている時には、債券価格が上昇していることもあり、この場合は外貨ベースで投資元本を上回っている可能性があります。

特徴

主に証券会社で買付することができ、手数料は買い付け価格に含まれている。

短期・中期・長期・超長期などあらゆる期間の債券がある。

金利上昇に弱いが、景気減速時には人気が集中することが多い。

金利上昇時には価格が下落し(利回りは上昇)、金利低下時には価格が上昇する(利回りは下落)。

6. ドル建て保険

リスク: 低~中

保険会社の信用リスクがあります。つまり、保険会社が破綻した際には契約当初に約束されていた外貨の金額は保証されない可能性があります。

また、保険である以上何らかの保障機能がついているため、その保障コストがかかります。

具体的には、早期解約の場合にはかなりの確率で外貨ベースの金額で元本割れが発生します。

さらに、契約時の時の金利水準と、解約・満期時の金利水準により、解約返戻金・満期保険金が変動するタイプの保険もあります。

リターン: 低~中

同じ期間の外貨建て債券と比較すればリターンは低めになりますが、複利での運用になるため保険機能を備えたまま、効率的な運用をすることができます。

外貨建てであっても、国内の保険税制の優遇を受けることができ、他の金融資産にはないメリットもあるため、富裕層をはじめとして、一定のニーズがあります。

特徴:

一生涯の保障がある終身保険、保険金額と満期保険金額が同額の貯蓄性の高い養老保険、年金原資を作ることに特化した年金保険があります。

アメリカドル建ての場合、アメリカの金利情勢に解約金が左右されることがあります。

契約時の金利水準よりも、解約時・満期時の金利水準が高い場合には、想定していた外貨を受け取れない場合もあります。

まとめ

  • 低リスク・低リターン: 外貨預金、外貨建てMMF、ドル建て保険
  • 中リスク・中リターン: 米国債券
  • 高リスク・高リターン: 米国株、米国株ETF

すべての金融商品は、リスクとリターンが一体と考えることが重要です。

高いリターンを期待できると言うことは、高いリスクを含んでいいます。

今回ご紹介した金融商品のリスクリターンをまとめると以下のようになります。

ただし、商品性により異なることもあるので、外貨での運用をする際には必ず専門家やアドバイザーに相談して決めるようにすることをお勧めします。

FPドットコムでも、外貨運用に関する相談をお受けしていますので、お気軽にご相談ください。

 

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