医療保険とは、病気やケガの治療にかかる経済的負担を軽減するために加入する保険です。
国が運営する公的医療保険(健康保険)だけではカバーしきれないと思われる負担分を、民間の保険会社が提供する医療保険で補うことが一般的です。
高齢化・長寿化に伴い保険会社が販売する医療保険は多様化していて、より細やかなニーズにマッチした保険を選ぶことが可能になっています。
最近は保険料の支払い期間を一生涯にする「終身払い」にすることにより、1回あたりの保険料を安く抑える提案がよく見られます。
しかし、いくら安いといっても、一生涯支払うことを考えれば、保障内容なども厳選しなければなりません。
注意するべきものとしては、「特約」を付けすぎることです。
今回は特約を付加しすぎるとどれくらい保険料に違いが出てくるか、実際の保険料例を交えて解説します。
主契約と特約
主契約とは?
「主契約」とは、保険契約の中核となる部分であり、基本的な保障内容や条件が定められているものです。
保険料の支払いや保険金の支払い条件、保険金額など、契約の基本的な枠組みが決められています。
したがって、主契約は、保険会社と保険契約者との間の基本的な契約内容を規定したものとなります。
特約とは?
主契約の内容に加えて、特定のリスクや条件に対応するためのものが「特約」です。
特約を追加することにより、保障内容が強化されますが、追加で支払う保険料も発生します。
多くの特約は、1つ1つは月数百円であることが多く、追加しやすいことが特徴でもあります。
では、実際どのような特約がどれくらいの保険料になるのかを見ていきます。
実際の医療保険の主契約と特約の例
主契約部分の試算
30歳の女性が医療終身保険に加入する場合で試算してみます。
保険期間:終身
保険料払込期間:終身
給付金日額:1万円
この内容が「主契約」となります。
解約返戻金が無いタイプで、60日型と呼ばれるものです。
月々支払う保険料は、3,380円となりました。
安いか高いかは他の保険会社の医療保険を色々と比較しないといけませんが、これは安い部類に入ります。
基本的な特約を付加する
医療保険やがん保険に加入する人の多くが、「先進医療特約」を付加します。
これは、公的な保険制度の適用外となる先進医療や高額な医療技術を利用する際の費用を補助する内容となっています。
この特約を付加することにより、最新の治療を受ける際の経済的負担を軽減できます。
先進医療とは、新しい医療技術や治療方法で、まだ健康保険の適用が認められていないものを指し、これらの治療は、通常の健康保険の対象外となることが一般的です。
この条件で、先進医療特約を付加した場合の保険料は、月々140円となります。
この特約は保険会社ごとで差が出ることはあまりありません。もとの保険料が安いことが理由に挙げられます。
その他の特約を付加する
入院一時金給付特約
この特約では、被保険者が入院した際に、あらかじめ定められた金額が支払われます。
今回の例では、給付金額を5万円とした場合、月々の保険料は455円です。
通院治療特約
通院治療特約は、通院日数ごとに定められた金額が給付されます。
通院日数ごとに一定の給付金が支払われますが、適用条件や給付金額、通院回数の上限などは、保険会社や契約の内容によって異なります。
例では日額5千円として設計しており、この場合の月々の保険料は510円です。
8大生活習慣病入院特約(60日型)
8大生活習慣病とは、一般的に次のような病気を指します:
- がん(癌)
- 心疾患(例:心筋梗塞、狭心症)
- 脳血管疾患(例:脳梗塞、脳出血)
- 高血圧症
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 肝疾患(例:肝硬変、脂肪肝)
- 脳血管障害以外の脳疾患(例:パーキンソン病)
この特約では、8大生活習慣病で入院する必要が必要が生じた際に、入院日数や治療内容に応じて支払われます。
給付の形式や条件は保険会社や契約によって異なります。
例では、日額5千円で設計しており、月々の保険要は700円です。
女性医療特約
女性特有の疾患による医療費を軽減するための保険の特約です。
この特約は、女性が一生のうちで経験する可能性のある特定の病気や状態に焦点を当てており、発症時や治療時の経済的負担を軽減することを目的としています。
この特約でカバーされる病気は、保険会社によって異なることが多いですが、一般的には以下のような疾患が含まれます。
- 乳がん
- 子宮がん(子宮頸がん、子宮体がんなど)
- 卵巣がん
- 子宮筋腫
- 卵巣嚢腫(卵巣のう腫)
- 更年期障害
- 妊娠合併症(別途扱いの場合もあり)
- その他の女性特有の疾患
例では、日額5千円で設計しており、月々の保険料は700円です。
女性特定疾病通院特約
「女性特定疾病通院特約」では、女性特有の疾病により通院する必要が出た際に給付金がでます。
この特約でカバーされる病気は、上記の女性医療特約に準じていることがほとんどです。
例では、給付日額を3千円で設計しており、月々の保険料は318円となります。
薬物(薬剤)治療特約
悪性新生物(がん)の場合には、長期間の治療になるため、薬剤治療費用は高額になる傾向があります。
この特約では、高額な薬物(薬剤)治療に関わる経済的負担を軽減することが期待できます。
例では、抗がん剤治療給付金額を3万円、自由診療抗がん剤治療給付金額を6万円として設計しており、月々の保険料は294円となります。
特定3疾病一時給付特約
特定の3つの重篤な疾病に対して診断された場合に一時金を支払う保険の特約です。
「特定3疾病」の内容は保険会社によって異なることがありますが、一般的には以下のような病気を指します。
- がん(癌)
- 急性心筋梗塞
- 脳卒中
例では、給付金額を10万円で設計しており、月々の保険料は238円となります。
がん診断特約
被保険者が、がんと診断された場合に一時金が支払われる特約です。
治療開始のための初期費用や、治療に伴う生活費の補助、仕事を休むなどによる収入の減少をカバーすることなどを目的に付加するケースが多いです。
例では、給付金額を10万円とし、月々の保険料は180円となります。
継続入院・在宅療養費特約
継続入院給付は、入院が一定期間以上続く場合、定められた日数ごとに給付金が支払われます。
在宅療養給付は、病院から退院後も引き続き治療が必要な場合、在宅での療養にかかる費用に対して給付金が支払われます。
この特約は、保険期間が決められていることがあり、保険料の支払いもその保険期間の間に限られます。
例では、保険期間を55歳までとし、給付金額を5万円で設計しており、月々の保険料は550円となります。
特約はどこまで付ければいいのか?
代表的な医療保険の特約について保険料を算出してきましたが、これらの特約をすべて付加するとどれくらいの保険料になるかを表にまとめました。
主契約の保険料3,380円に対して、総額は6,765円となりました。
特約の一つ一つが数百円であっても、盛沢山の保障内容になると、総支払額が主契約の2倍以上の金額になることは珍しくありません。
保険は、保障内容を充実させると保険料支払い額も増えることになります。
この辺りはきちんと精査して検討する必要があります。
まとめ ~必ず専門家に相談して加入する~
医療保険は、各保険会社の競争の激しい分野であり、日々新しい保険が開発されています。
極端なことを言えば、今日加入する医療保険よりも、明日加入する医療保険の方が良いというイメージになります。
しかしながら、保険会社の出方を見て保険に加入することを検討する人はいないでしょうし、家計の状況を十分考慮して保険選びをしなくてはなりません。
その際に、まず最初にすることは、家計の見直しやライフプランについて親身になって考えてくれるFPなどの専門家に相談することです。
自分では節約しているつもり、保険もきちんと選ばんだはず、とはいっても、プロの目から見れば異なったアプローチがあります。
安心を買うのが保険ですが、過剰な保障は家計を圧迫します。
FPドットコムではライフプランや家計の見直しに、親身に相談に乗ってくれるFPをご紹介しますので、お気軽にお問い合わせください。